靖国参拝が問題になる理由。今さら人に聞けない歴史の背景

靖国参拝が問題になる理由。今さら人に聞けない歴史の背景

靖国参拝を日本の総理大臣が行うと、中国と韓国の異常とも思える抗議のデモが起きますが、その様子をテレビで見てみなさんはどういう感想をお持ちでしょうか。画面を見れば、総理の靖国参拝を反対しているのは理解できますが、それにしても異様な光景です。

そして毎年8月15日の終戦記念日が近づくたびに、テレビの討論番組は靖国参拝問題でもちきりです。問題の焦点は総理が靖国参拝に行くべきか、行かないべきかという話。賛成派と反対派の政治評論家に別れて大激論です。

1945年の終戦から70年。靖国参拝の問題はどんどん歴史の証言者が少なくなる中で国際問題に発展しています。国のために亡くなった人達に祈るのは当然のことなのに、どうして中国や韓国はそれほど嫌がるのでしょうか。今回は靖国参拝が問題になる理由を当時の歴史を振り返りながらわかりやすくお伝えします。

 

靖国参拝が問題になる理由。
今さら人に聞けない歴史の背景

 

そもそも靖国神社とは

靖国神社は1868年(明治元年)に始まった戊辰戦争の官軍の戦没者を慰霊するために「東京招魂社」として設立され、1879年(明治12年)に靖国神社と改称されました。日清戦争6000柱、日露戦争8000柱を初めとして第一次世界大戦、第二次世界大戦、台湾出身の軍人、朝鮮半島出身の軍人を含む約246万6000柱の英霊が祀られている国家神道の代表的な施設です。

主な行事は4月21日から23日にかけての春季例大祭、10月17日から20日まで催される秋季例大祭がありますが、戦没者の遺族が多数参拝する8月15日の終戦記念日に参拝した歴代総理大臣は「福田赳夫」「鈴木善幸」「中曽根康弘」「小泉純一郎」の各氏です。ちなみに現在の内閣総理大臣 安部晋三首相は2013年12月26日に首相としては7年4ヶ月ぶりに靖国参拝をしています。

 

東京裁判とA級戦犯合祀について

靖国参拝問題を語る時に東京裁判とA級戦犯合祀は切り離せないキーワードです。そこでまずは東京裁判とA級戦犯合祀についてご説明しましょう。

日本が戦争で負けた翌年、1946年(昭和21年)に東京市ヶ谷の旧陸軍士官学校講堂において、アメリカやイギリスなどの連合軍による極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判が開かれました。この裁判で日本軍を指揮する立場にあった25名がA級戦犯として有罪判決。そのうち、東条英機ら7名が死刑判決を受け、その他にも公判中や投獄中に7名が死亡しました。

その後1951年(昭和26年)のサンフランシスコ平和条約により日本と連合国の戦争は事実上終結したのです。それは同時に日本で行われた東京裁判の判決を受諾するという意味でもありました。その後1978年(昭和53年)10月17日に死刑により死亡した7名と公判中や投獄中に死亡した7名についても、国のために命を捧げたとして靖国神社に合祀されたのです。

 

靖国参拝が問題になったきっかけ

ところが1979年(昭和54年)4月19日、朝日新聞が「1978年秋に靖国神社にA級戦犯が合祀されていた!」とスクープ。国民の多くがその事実を知ることになったのです。ですかその時の世界の反応はほとんどなく、報道後も鈴木善幸元首相が8月15日も含め計8回靖国参拝しましたが、中国からの抗議はありませんでした。

そしていよいよ靖国参拝が問題になるきっかけとなった事件が起こります。1985年(昭和60年)終戦後40年を迎えた節目の年に、時の総理大臣 中曽根康弘氏は8月15日、終戦の日に靖国参拝すると公言します。

それに呼応するように朝日新聞が8月7日の紙面に「特集、靖国問題 アジア諸国の目」と題した特集記事を掲載、靖国参拝に対する大々的なネガティブキャンペーンを行ったのです。記事の中で朝日新聞は「中国は靖国問題について日本の動きを注視している」と報じましたが、その時点では中国側に靖国参拝に対する批判の動きはなかったとされています。

しかし、その年の8月15日、中曽根首相が靖国参拝した後に、中国と韓国から抗議がありました。この時の抗議は朝日新聞のキャンペーンがきっかけという説もありますが確かなことはわかっていません。

 

賛否両論、靖国参拝問題の論争の争点

2015年8月7、8日に毎日新聞が行った世論調査では安部内閣の支持率は32%。新聞社の思惑を差し引いても黄色信号です。そんな世論の逆風を受けながら、2015年4月から5月に実施された日本のNPOと韓国の東アジア研究院による第三回日韓共同世論調査では、首相の靖国参拝を容認する人は「参拝してもかまわない」「私人としての立場ならかまわない」と言う意見を合わせ70.4%。

一方、日本と韓国の関係で何が問題かという問いに対し、韓国の人の60%以上が「侵略戦争に対する日本人の認識」と答えています。

以上の調査結果をご認識いただいた上で、靖国参拝問題の議論の争点をご説明します。

<首相の靖国参拝に対する賛成の意見>

日本のために尊い命を犠牲にされたご英霊に対し、一国の長がお参りに行くのは当然ことです。またアメリカのアーリントン国立墓地を始め世界各国には戦没者の追悼施設があり、式典には毎年国の代表が参拝に訪れています。日本だけ他国にとやかく言われる筋合いはありません。

<首相の靖国参拝に対する反対派の意見>

日本は中国、韓国を初めとするアジア各国に侵略戦争繰り返し、たくさんの犠牲者を出し被害を与えました。その指導的な立場にあったA級戦犯が祀られている靖国神社に一国の長が参拝に行くべきではありません。またその行為に対し中国や韓国も過剰な反応を示し国際問題に発展しています。そもそも隣国が嫌がることをしないほうがいいのではないでしょうか。

代表的な賛成意見と反対意見をご覧いただきましたが、論争の争点は日本の侵略戦争に対する反省。靖国神社にA級戦犯が合祀されていることです。つまり、口では中国、韓国に対し「おわび」を表明するくせに、なぜ靖国神社に参拝して日本の侵略戦争を正当化するような真似をするのかということなのです。

また日本人は独特の宗教観から、どんな悪い人でも亡くなったら仏様としてお祀りすべきと考えますが、外国ではそれが通用しないことも問題をこじらせる火種になっています。それに加え安部内閣は集団的自衛権の行使は各国に対する抑止力につながるとして強硬路線を強めていますが、そのことも中国や韓国の反応を過敏にさせる原因になっているのです。

 

いかがでしたでしょうか。

ここまで靖国参拝問題についてごく簡単にお伝えしましたが、大枠はご理解いただけたでしょうか。この議論はテレビの討論番組をご覧になってもわかるように、集団的自衛権や従軍慰安婦問題、南京虐殺の真意と、どんどん裾野が広がり解決できません。

結局、中国、韓国が異常に反対する理由は靖国カードを使って日本との関係を有利にコントロールしようとする政治的意図だと推測されますが、それを日本側が正面から口にすると両国間の関係が更に悪化する可能性があります。

戦後70年。今の日本の平和は戦争中に亡くなったたくさん人達の犠牲によって成り立っていることに疑いの余地はありません。できればこんなに大騒ぎすることなく、静かに感謝の気持ちを捧げたいものですが、戦争中に日本がアジア各国に与えた傷はまだまだ癒えていないのかも知れません。

 

まとめ

今さら聞けない靖国参拝の問題を歴史的背景を含め簡単に説明します

・まずは、靖国神社の成り立ちと歴史について解説
・靖国問題のキーワード東京裁判とA級戦犯合祀について
・靖国問題がクローズアップされるきっかけになった事件
・靖国参拝が問題になる理由を解説


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